[公開型リサーチ活動(年表制作・資料回収と整理・トークイベント・ツアー)]

SIAF2017におけるアートとリサーチセンターの活動

日程: 2017年8月6日 - 2017年10月1日

場所: 札幌市資料館

アートとリサーチセンター
調査と記録と共有のための終わらないプロジェクト

SIAF2017開催期間中の運営体制
デザイン・運営アシスタント:寺岡 桃
データベース・公開メディア構築:須之内 元洋
調査記録作業アシスタント:足立 岬 / 澤口 優七 / 塚崎 唯 / 平中 麻美子
コーディネート:SIAFラボ
企画・運営・館長:小田井 真美(さっぽろ天神山アートスタジオ/ AIRディレクター)

謝辞
岡部 昌生 氏 / 小牧 寿里 氏 / 小室 治夫 氏 / 深澤 孝史 氏 / 穂積 利明 氏 / 梁井 朗 氏
(北海道美術ネット) / 北海道マガジン「カイ」編集部(株式会社ノーザンクロス) / NPO S-AIR /
北海道新聞文化部 / アートとリサーチセンター開設期間中にお立ち寄りくださり対話をしてくださった多くの来館者の方々 / 主催プログラムに参加・来場くださったみなさま /500m美術館 / 札幌市市民文化局 文化部 / 札幌市国際芸術祭担当部 / 公益財団法人 札幌市芸術文化財団 市民交流プラザ開設準備室 / これまで北海道・札幌で芸術文化活動に携わってこられた、文化芸術関係者・団体のみなさま / 北海道・札幌で様々な活動をしてきた(している)アーティストのみなさんと、様々な協力をなさった(なさっている)地域の皆様

SIAF2017ウエブサイト
札幌市資料館を拠点としたアートプロジェクト
SIAF2017終了後、500m美術館にて「500m美術館がみた札幌国際芸術祭2017」で、活動報告を行いました。

*活動の概要は、同年の秋に500m美術館で開催されたSIAF2017のアーカイブ展で公開されたプロジェクト報告_PDFをご覧ください。
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報告のおわりに、これからのこと。
はじめのうちは、ほかの場所からきた人(よそ者)の活動記録に取り組むことで、北海道・札幌を拠点に活動するアーティストなど地元の文化芸術活動に対するオルタナティブな美術史がつくれるかもしれないと考えていました。作業の過程の中で、アーティストではないけれど政府に依頼される以前から自らの好奇心にかられ内地から調査の旅に訪れていた松浦武四郎がこの場所に暮らしていたアイヌの人々と出会い、学び、個人レベルで未知の場所と人々との交流を築いたこと、仕事として地図にまとめたことと、北海道以外を拠点におくアーティストのこれまでの北海道への訪問と旅と仕事とが、ふんわりとかぶるような気がして、そもそも「地元」の人々もよそから来たのに、と、「地元」と「よそ者」の厳密な区別は果たして必要なんだろうか?と考えが転換するようになりました。
日本政府による開拓政策が始まる以前から南部には江戸幕府の采配により松前藩がおかれていましたが、それ以前からも先住民族が暮らし、そこへ近隣からの貿易や商売のために多様な人々がこの場所に住み往来をしていました。
現代の北海道にいる多数の人々やその先代たちは、今わたしが調査しようとしているアーティスト同様に『どこからか移動してこの場所にたどりついている』のです。つぎに、SIAF2014で取り上げた伊福部昭のことを思い出し、別の視点が芽生えました。先の展覧会の準備で北海道音更町を訪れたとき、この地域にはアイヌのコタンがあり、同時に日本のあちこちの地方から出稼ぎに来ていた労働者の集まる場所であったと聞きました。音更町はまさに多様な文化がひとつの場所に投げ込まれたユニークな地域で、作曲家が多様な文化を浴びて育ったから独特の世界観、ほかにはない強靭な作家性が生まれたのだと想像することができたのです。
アートとリサーチセンターが向き合うものことは、客観的事実の掘り起こしと記録ですが、それは美術史をつみあげるピースの収集という側面でもありつつ、わたしの興味は別のところにあると思い至りました。派生的に、<出目混じりあう人々の定着と往来の混じった多様な営みが共存するユニークな地域=北海道・札幌>と<アーティスト>との関係性、伊福部と音更のような可能性に満ちたポジティブな事例が発見されるかもしれない、という好奇心です。
これまで北海道で活動してきたアーティストの視点や足跡をなぞる思考と作業は、北海道・札幌らしい未来のオプションのひとつを予感させます。そのオプションとは、この地域が大きな歴史の流れによりいま結果として稀有な状況を作り出してきて(これからはこの状況をよりよい方向に読み解くことができるとしたら)、多様な人々の多様な文化による協働作業を経て公共性を獲得し、寛容で満たされた多文化共生社会と自覚的に変化していくことができるのではないかというものです。アーティストがのびのびと自由に活動できる環境であること、そこでそのとき、アーティストの視点や活動、移動や定住と往来のメカニズムに伴って発生する地域と人との交流が、自由でしなやかな筋力をつかって、社会の変化のきっかけになると、SIAF2017を終えたいま、そんなふうに提示されたように思えてなりません。

参考資料