続けるための記録について _AIR勉強会001

対象

AIR事業運営者、AIR事業をはじめようとしている方、アートプロジェクト運営者、アーティスト、研究者など、現場と記録活動に関心のある個人、団体
さっぽろ天神山アートスタジオに興味関心のある個人、団体

概要

博物館、美術館、資料室で実践されている従来の精密なアーカイヴ手法はそのまま運用するのが難しいと実感しています。形に残らないもの、進行形のプロジェクト、アーティスト・キャリアのある段階を可視化してみたい。これらを記録し保存し管理して利活用することができるのか。その作業を忙しい現場でも喜びに変えて記録し、編んで、しっかりと活用していくための手法を講師と参加者のコミュニケーションを通して学びあう勉強会です。

多くの現場が切実に抱える悩みを持ち寄り、講師、ゲスト、参加者が合宿期間中に語り合いながら、それぞれの現場で運用してみたい、または運用可能な手法を構想し、それを組み立てたり壊したり、ひたすら思考する時間を共有する3日間です。

日程

2018年11月25日(日) 26日(月) 27日(火) / 3日間

会場

さっぽろ天神山アートスタジオ、ほか札幌市内複数箇所

講師(敬称略)

見学協力(予定)

北海道立近代美術館 資料室、北海道大学総合博物館、札幌市資料館(SIAFラウンジ)、札幌市市民プラザ(SCARTS、札幌市図書情報館)、札幌オリンピックミュージアム所蔵庫、ほか、市内数カ所

参加条件/方法/参加費 要事前申し込み!定員あり!

  1. ① 3 DAYS / 全てのプログラム (10,000円) 定員10名

    滞在スタジオ利用料、寝具代、朝食代、交流会経費が含まれます)
    参加者の居住地から札幌市内までの交通費、合宿中の朝食・交流会以外の食費、そのほか滞在中にかかる経費は自己負担となります。
    滞在スタジオを利用しない場合は、お問い合わせください。

    お申込み: PC / スマホ

  2. ② One Day /1日間のみ (4,000円/日) 定員10名

    交流会参加を含みます。

    お申込み: PC / スマホ

  3. ③ プログラムごと (1,500円/回) 定員15名

    ただし、タイムテーブルの⭐マーク付きのものに限ります。

    お申込み: PC / スマホ

タイムテーブル(案)

Day1_11/25(日)
13:00 天神山アートスタジオ チェックイン完了
14:00 北海道立近代美術館 資料室見学 *予定
==札幌市資料館SIAFラボに徒歩で移動==
16:00 ⭐レクチャー01 アートプロジェクト、作家のデジタルアーカイヴ/須之内元祥 講師
17:00 ⭐レクチャー02 YCAMのドキュメンテーション/ 渡邉朋也 講師
18:30 ⭐ゲスト・スピーカートーク/原久子さん(キュレーター)「関西のアートシーンの記録事情」
==交流会会場に徒歩で移動==
20:00 交流会01+オリエンテーション
Day2_11/26(月)*休館日
8:00 朝食
9:00 フリーディスカッション
== エクスカーション参加希望者のみ乗用車に分乗で移動<定員8名>==
10:00 エクスカーション02 札幌オリンピックミュージアム アーカイブ見学/白取学芸員の解説付き
ランチ(各自)
12:45 北海道大学総合博物館内会場に集合
13:00 ⭐レクチャー03 アートプロジェクトの現場と事業評価/ 吉澤弥生 講師 *オンラインレクチャー
14:30頃から、 北海道大学総合博物館のアーカイブ見学
16:00 ⭐レクチャー04 「記録資料のアーカイブ化」/山下俊介 講師@北海道大学総合博物館
==交流会会場に移動==
19:00 交流会02&さっぽろ天神山アートスタジオとアートとリサーチセンターの試み/小田井真美
Day3_11/27(火)
8:00 朝食
– 天神山アートスタジオ チェックアウト手続き完了 –
10:00 勉強会振り返り(参加者それぞれの運用計画の発表と意見交換/講師からのコメントと提案)
12:30 終了(解散)
==以下、希望者のみ

13:00 オンライントーク <道東の私設&胸熱な資料館の事例紹介>
斜里 //北のアルプ美術館について/山崎館長、シリエトク編集室中山芳子さん

14:30 エクスカーション03 図書館の試み
 - 14:30-15:00 札幌市中央図書館/さっぽろ資料室
 - 16:00-16:45 札幌市図書・情報館/アートセクション
 - 17:00 ごろ SCARTS見学/吉崎プログラムディレクターのご案内

クレジット

主催:AISプランニング/札幌市、さっぽろ天神山アートスタジオ
企画:アートとリサーチセンター
協力:調整中
支援:文化庁

講師プロフィール

須之内 元洋
札幌市立大学講師、研究者

1977年生まれ。ソニー株式会社、サイボウズ・ラボ株式会社勤務を経て、2007年に札幌へ移住。札幌市立大学デザイン学部にて、メディア環境学、メディア・アーツ、情報科学分野の研究・教育活動を行う。また、2002年にデザインファーム ASSISTANTを共同設立し、デジタルアーカイブ・プラットフォームをはじめとした各種デジタルメディアの設計・デザインを行うなど、研究成果の社会応用・実践を積極的に行っている。近年のデジタルアーカイブ関連活動として、森正洋デザインアーカイブ、SIAF2014プロジェクトマネージャー、Tokyo Art Research Lab(東京都)研究・開発プロジェクト、日本財団アーカイブ支援プロジェクト(みずのき美術館、はじまりの美術館、鞆の津ミュージアム)、アートと障害のアーカイブ・京都(京都府)など。


山下 俊介
北海道大学総合博物館・助教。

研究対象は学術機関に残る写真・映像等の資料のアーカイブ化。京都大学研究資源アーカイブなどを経て2015年より現職。持続的活用が可能な資料アーカイブの開発に取り組む。近年では,映像作家との資料活用協働プログラムを一部組み込んだ展示「視ることを通して」(2018)企画。


吉澤 弥生
共立女子大学文芸学部教授、NPO法人地域文化に関する情報とプロジェクト[recip]理事/NPO法人アートNPOリンク理事。

近著に「芸術生産の現場から考える ―労働・キャリア・マネジメント」(藤井光との対談)『社会の芸術/芸術という社会』(フィルムアート社、2016)、単著『芸術は社会を変えるか? —文化生産の社会学からの接近』(青弓社、2011)など。またrecipでは『「船は種」に関する活動記録と検証報告』(2013、東京都)、アートNPOリンクでは『アートNPOデータバンク2016-17 —アートNPOの基盤整備のためのリサーチ』(2017、文化庁)などを共同制作。


渡邉 朋也
山口情報芸術センター[YCAM]アーキビスト/ドキュメンタリスト

1984年東京生まれ。多摩美術大学図書館を経て2010年から現職。山口情報芸術センターでは、主催事業における記録映像や記録写真などのドキュメント制作のコーディネーションのほか、ドキュメントを公開するためのプラットフォームとしてウェブサイトのディレクションなどを手がける。また近年は、過去に山口情報芸術センターが制作したインスタレーション作品の保存・修復・再制作のプロジェクトもおこなっている。

参考情報

さっぽろ天神山アートスタジオ(施設と場と状況を活用したAIR活動)

札幌市の遊休施設、中期滞在宿泊施設「旧札幌天神山国際ハウス」を修繕し、国際的なアーティスト・イン・レジデンス(*1)(以下、AIR)事業のできる文化芸術施設へと用途を変更、2014年夏、札幌国際芸術祭2014の開催に伴い文化芸術施設として再稼働させた場所と状況を活用したアーティスト・イン・レジデンス活動の試みです。

天神山緑地内の自然豊かで静かな公園環境の中に、市内、国内外のアーティストや文化芸術に関する研究者など(*2)が滞在しながら制作や調査・研究を行うための<滞在スタジオ(有料)>が13室(*3)あります。滞在スタジオだけではなく、市民の活動のための<交流スタジオ(有料)>が3室併設されています。創造的活動と市民との交流、市民の自発的な活動の実現、支援を目的とする札幌市内における新しいタイプの文化芸術施設です。さらに、施設1Fのロビー空間は緑地公園の無料休憩所として常時開放しています。どなたでも気軽に立ち寄ることができるため、アーティスト、市民、公園利用者といった一見接点のない三者三様の活動が混在するユニークな場を創出しています。

この施設を用いたAIR活動の独特の雰囲気と、札幌、北海道の地域の気候・歴史・文化といった多様な特色や状況があわさり、日本におけるリサーチや滞在制作のための新しい拠点、AIRの現場のひとつとして国際的なアーティストなどから注目され、5年目の現在、一年間でのべ400人を超える国内外の創造的活動分野の方が滞在スタジオを利用し、札幌市、北海道で滞在制作など創造的な活動をおこなっています。

* ウエブサイト https://tenjinyamastudio.jp/

(*1)アーティスト・イン・レジデンス(AIR)は、アーティスト(創造的活動を行うもの)の移動を促進する事業やしくみのことを指す。創造的活動を行うものにとって「一時的な移動」の機会は自身の活動を活性化させキャリア構築に有効であると理解されている。AIRの起源とされるのは、17世紀にフランス政府が新進アーティストに対する奨学金のひとつとして「ローマへの旅行の資金と機会」を与えたことであり、以降、欧州を中心にポストアカデミーとしての役割や位置づけ、奨学金に代わる賞与、アーティストの活動を支援する精神を受け継ぎながら世界中に広がった。日本は遅れること1990年代に、国際交流基金、文化庁がアーティスト育成、創造的活動への支援ならびに文化外交の新しい手段として事業モデルを全土に拡散した。現在までに、行政、民間、個人など多彩な運営体制のもと、全国で事業運営が行われている。また、アーティストがある地域に一定期間滞在することの副産物として現れる地域振興、地域活性化を狙った事業にAIRが導入されるようになり、創造的活動を行う人への支援という理念を尊重しながら、各地で開催される国際展、地域コミュニティ再生の事業の爆発的な増加と連動してAIRというしくみが取り込まれている。そこにはそもそも文化芸術活動が表現の当事者以外の他者に与える影響への期待とともに、「滞在制作という活動形態」「地域性を取り込んだ、または起因する作品や活動」のもたらす文化芸術事業のアクセシビリティの手段になりうる側面を活用している。この傾向は市民社会における文化芸術の位置づけの違いからか、アジア圏、日本独自の展開であり欧米 のAIRとは趣の異なる特徴といえよう。

(*2)美術、音楽、工芸、演劇、ダンス、文芸、写真、映像、デザインなどの分野で創造的な活動を行う方。

(*3)AIR事業のためのアートスタジオ施設としては日本国内で最大規模(2018年9月時点)。スタジオ数を活かし複数分野の関係者、表現者、アーティストなどが同時に滞在するため、滞在者同士の日常的な交流が自然と生まれている。また、市内の多様な文化芸術活動、情報の行き交うハブ施設として機能しはじめている。

アートとリサーチセンター

〈調査と記録と共有のための終わらないプロジェクト〉として2017年度春に、活動をスタートさせました。さっぽろ天神山アートスタジオの地域における機能の明確化(実態)と未来に向けての展望を見出すための調査としてオルタナティブに活動しています。きっかけは、2015年度3月に実施した「アートとリサーチワークショップ」です。2017年夏の札幌国際芸術祭(SIAF)2017開催期間に、北海道外を活動拠点とするアーティストが一時的に北海道・札幌に滞在し「滞在型制作/アーティスト・イン・レジデンス、展覧会、ワークショップなど」を行った記録を1970年代から調査し記録する活動をはじめました。また、彼ら北海道外を拠点とするアーティストの活動を調査する中で、平行して北海道美術の出来事も公開型のイベントを仕立てたりしながら、記録印刷物を元に調査し、記録を試みました。

参考資料
データベース・ウエブサイト(2018年11月末オープン) https://aarc.jp/
2017年 アートとリサーチセンター公式ブログ https://aarc2017.tumblr.com/
2016年 アートとリサーチワークショップ・ドキュメントウエブサイト https://ws2016.tenjinyamastudio.jp/